馬が1日に走れる距離は?
古代から人間の移動や輸送の手段としても利用されてきた馬。文明が新しい土地へと伝播していくとき、その旅路にはたくさんの馬たちがいました。もし人や荷物を乗せて長い距離を移動することができる馬がいなければ、わたしたちの歴史は今とは全く違うものになっていたでしょう。
実際のところ馬は一日でどのくらいの距離を進むことができるのでしょうか?
どれくらいの距離が走れるのか
この項目では、馬の走るペース(常歩・速歩・駆歩・襲歩)ごとに分けて、どのくらいの距離を移動することが出来るのかをご紹介していきます。
常歩の場合
馬がトコトコゆっくりと歩いているのが常歩(なみあし)です。
常歩(なみあし) | |
時速5~6km | 1日に約50~60km移動可能 |
何日も継続して長い距離を移動することが可能 |
時速に換算するとおおよそ5~6kmほどで、休憩をはさみながら1日に約50~60km進みます。
馬にとって比較的負担が少ないので、何日も継続して長い距離を移動することが出来ます。
速歩の場合
常歩の次に速いのが速歩(はやあし)。
速歩(はやあし) | |
時速13~15km | 1日に数回繰り返し約30~45km移動可能 |
速歩を継続できるのはおおよそ1時間程度 |
馬にとってはジョギング程度の運動で、時速約13~15kmの速さが出ます。
速歩を継続できるのはおおよそ1時間程度です。1日に数回このペースで走ったとして、距離にして30~45kmほど進むことができるでしょう。
駆歩の場合
駆歩(かけあし)ではどうでしょう。
駆歩(かけあし) | |
時速20~30km | 1日だと最大30kmほど走行可能 |
駆歩を出せるのは一度に30分が限度 |
この歩法で走ると時速は20~30kmほど。速度がしっかり出てきます。
速度が出るぶん馬にとっては身体的な負担が大きくなりますので、駆歩を出せるのは一度に30分が限度です。 1日だと最大30kmほど移動できます。
全速力(襲歩)の場合
馬の出せる一番速い歩法が襲歩(しゅうほ、ギャロップ)です。
駆歩(かけあし) | |
時速60~70km | 1日だと4~5kmほど移動可能 |
襲歩で走り続けるのは5分が限度 |
競馬などで馬が全力疾走しているのを想像していただくのが一番わかりやすいですね。
サラブレッドなどの競走馬がひとたび襲歩をすると、なんと時速60~70kmと猛烈なスピードが出るそうです。ただこの速さで走ると馬は激しく体力を消耗してしまい、走り続けられるのは5分がやっと。
その日1日はすっかり疲れ切ってしまうので、移動できる距離としては4~5kmと、4つの歩法のなかではいちばん短くなってしまいます。
馬も当然生きている動物ですので、車や電車などのようにいつまでも走り続けることはできません。
人々は、大切な財産でもある馬の様子をみながら、さまざまな工夫をこらし移動を続けてきたのです。
人馬一体の長距離競技・エンデュランス
エンデュランス馬術競技というものをご存じでしょうか。
野外を走るため、勝敗には天候・地形・コース・時間配分などさまざまな要素が絡み合います。
エンデュランス競技の特徴であり、もっとも重要視される点は、
「馬の健康や安全を適切に管理できているか」ということ
走行するコースは区間分けされており、各区間を走破したあとには必ず獣医師による馬の健康チェック(馬体検査・ホースインスペクション)が行われます。馬の体温や心拍数、歩様、怪我の有無などを細かく検査し、不合格になった場合はその時点で失権。リタイアとなるのです。
2019年に北海道で行われた「全日本エンデュランス馬術大会」では、関西学院大学在学中の荒井三冬選手・キセキノヒカリがなんと一日で120kmを走破し優勝しました。
昔伝達手段として使われていた早馬、実際の伝達スピードは??
今からさかのぼって江戸時代、電話もインターネットもない日本では、遠い場所へ伝言を早急に伝えなければならない際には「早馬」という通信制度が利用されていました。命令を受けた使者は馬を駆り、できる限り速く口頭や書面をもって相手方に伝令を送り届けました。
また、古代ローマ、モンゴル、イスラム帝国など世界各国でも、日本の「早馬」と同じように馬を使った通信・伝達手段は古くから発達しており、「駅伝制」「伝馬」と呼ばれていました。
しかし上でも説明したとおり、いくら優秀な馬であったとしても何十・何百キロもの長い距離をスピードを保ったまま走りきることはできません。人々はどのように工夫してこれらの制度を成立させていたのでしょうか?
効率よく伝達するための早馬の仕組み・からくり等
早馬は、その名の通り馬を速く走らせて荷物や伝令を伝える手段です。
できるだけ速く馬で伝令を伝えるためにはどうすればよいのでしょうか?
答えは、「リレーのバトンのように疲労した人と馬を取り換えながら進む」です。
- 伝言スタート宿駅AAさんとA馬は伝言を預かり、目的地をスタート!
- 中継ポイント宿駅BAさんからBさんにバトンタッチ!人も馬も交代!
- 中継ポイント宿駅CBさんからCさんにバトンタッチ!人も馬も交代!
- 伝言ゴール宿駅DCさんからDさんにバトンタッチ!人も馬も交代!
あとは伝言を宛先通り届けて納品してゴール!!!
江戸時代には、江戸を起点として東海道・中山道・日光街道・奥州街道・甲州街道の「五街道」、五街道から分岐する「脇街道」とよばれる主要街道が整備され、たくさんの人々や荷物が日々行き交っていました。
各街道には「宿駅」とよばれる、旅の途中に休憩・宿泊ができる施設が数多く置かれました。
早馬で利用されていた馬はどんな馬?
ただ、その当時日本で利用されていた馬は、
現在私たちが目にするサラブレッドなどのように大きな馬ではありませんでした。
どちらかといえば小柄で脚が短くずんぐりとした在来馬で、人を乗せたうえで走るスピードは速くても時速15kmほど、加えて街灯のない真っ暗な暗闇の中では馬は走ることができないため、活動時間は日の出ている間の10時間程度に限られてしまいます。
馬の特徴・種類についての詳しい紹介はコチラ
https://www.jothes.net/contents/column/3068/
差し迫った事情がある場合は、屈強な人夫をスカウトし、馬に身体と文書をくくりつけて数日、目的地まで走らせるという恐ろしい方法も使われていたそうです。ハードすぎる・・。
歴史に残る早馬の逸話
世界の「駅伝制」のなかでも有名なのが古代オリエント・ペルシャ帝国の「王の道」です。
紀元前5世紀ごろに、アケメネス朝の大王ダレイオス1世により整備された幹線道路で、一日行程に相当する距離ごとに日本でいう「宿駅」が置かれました。
わずか7日で移動することが出来たという逸話が残っています。
スピードに遅かれ早かれはありますが、効率よく馬を利用する方法は人類共通なんですね。
まとめ
今回は馬が走れる距離の違いや、日本や世界で行われていた馬を利用した通信・伝達方法などをご紹介しました
気性がおとなしく、身体のつくりが人を背に乗せるのにたまたま適していた馬が、わたしたち人類の歴史にあたえてくれた影響は計り知れない大きさがありますね。
エンデュランス馬術競技は、協力し合い長距離を移動する馬と人の歴史を今日に感じることが出来るスポーツでもあります。日本でも行われている競技ですので、興味のある方はぜひチャレンジしてみてくださいね。
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