馬の毛並みは何色あるの?

馬の毛並みは何色あるの?

馬が野生に生きていた時代は、身体の色は肉食動物の標的とならないように周りの環境に馴染むような毛色が望ましく、目立つ体色の馬は仕留めやすい獲物として淘汰されてしまうのが自然の厳しいルールでした。しかし、馬が人間によって家畜化されるようになってからは珍しい毛色の馬はむしろ喜ばれ、家畜化が始まった6000年前頃から多様な色合いの馬が現在まで残るようになりました。
この記事では、馬の様々な毛色の特徴を写真とともにご紹介していきます。
競馬場や乗馬クラブで目を引くあの馬の色の種類も分かるかも!

代表的な8色

日本で競走馬に用いられるサラブレッドの毛色は、公益財団法人「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」において8種類認められています。

・青毛(あおげ)
身体が青光りするほど真っ黒な毛色を指します。被毛(身体の表面の毛)、長毛(たてがみや尻尾などの毛)ともに黒いのが特徴。 季節によっては毛先が日に焼けて、少し明るく褐色じみることがあるので、通年色の変化の少ない眼の周りや鼻先をよく観察して判断します。サラブレッドなどの軽種馬では青毛は少なく、比較的珍しい毛色のようです。
(代表的な競走馬)
・シーザリオ 日本競馬界の悲願、初のアメリカG1・オークス制覇!

・青鹿毛(あおかげ)
全身がほとんど黒色で、眼の周り、鼻のあたり、脇や下腹部など身体の柔らかい部分がわずかに褐色を帯びています。 青鹿毛と青毛の判別は非常に難しく、必要な場合はDNA鑑定によって判別することもあります。
(代表的な競走馬)
・キズナ 父ディープインパクトを思わせる溌剌さで、武豊騎手とともに日本ダービーを制覇。英ダービー、凱旋門賞でも好成績を残しました。

・黒鹿毛(くろかげ)
被毛の色合いは黒みがかった赤褐色で、眼の周りや脇、お腹の周辺は褐色の黒鹿毛。
個体差によってかなり黒っぽく見える馬もいるようです。体色の濃淡に関わらず長毛と四肢の先は黒色です。
(代表的な競走馬)
・ナリタブライアン 「シャドーロールの怪物」と呼ばれた、中央競馬史上5頭目のクラシック三冠馬。

・鹿毛(かげ)
鹿毛は家畜馬・野生馬問わず、最も多く見ることのできる馬の毛色と言われています。被毛は明るい赤褐色から暗い赤褐色までありますが、長毛と四肢の先はみな一様に黒色です。栗毛の馬と色合いが似ているので、見分け方は四肢と長毛が黒くなっているかで判断します。
(代表的な競走馬)
・ディープインパクト 言わずもがなの名馬の代名詞。 競馬を知らなかった人々にさえ愛され、社会現象になるほどの圧倒的な強さとキャラクターを持つ馬でした。

・栗毛(くりげ)
被毛の色は黄褐色(栗色)で、鹿毛と違い全身一様に同じ色合いをしています。
長毛は被毛より濃いものから淡くほとんど白色に近いものまであり、明るい長毛を持った栗毛の馬は、たてがみや尻尾の色合いがススキの穂のように見える様から「尾花栗毛」と呼ばれています。
「弥次さん喜多さん」で有名な江戸時代の娯楽本「東海道中膝栗毛」の「栗毛」は馬のことをさしています。当時は自分の膝を馬の代わりに使って移動する徒歩旅行のことを「膝栗毛」という言葉で表したそうですよ。
(代表的な競走馬)
・オルフェーヴル 中央競馬史上7頭目のクラシック三冠馬。凱旋門賞にも2度出場し快走しました。引退レースの有馬記念では2着から8馬身離して圧勝。有終の美を飾りました。

・栃栗毛(とちくりげ)
栗毛に似ていますが、被毛はより濃い色をしているのが特徴です。
暗い赤褐色から黒みの非常に強い個体までいるものの、色素の関係で黒色にはなりません。
身体の部位による体色の差は少なく、全身ほぼ同じ色合いをしています。 ただ長毛は被毛より濃い色のものから白色に近い色合いまで多岐にわたります。
(代表的な競走馬)
・サッカーボーイ 飛ぶような豪脚と派手な勝ちっぷりから「弾丸シュート」と形容されたサッカーボーイ。引退後は優秀な種牡馬としても活躍しました。

・芦毛(あしげ)
生まれた時の毛色は栗毛・栃栗毛・鹿毛〜青鹿毛・青毛などとさまざまですが、成長が進むにつれ白い毛が混じるようになり、白色の度合いが年々増していきます。色合いの変化は個体によってまちまちで、純白になるものから元々の毛色をほとんど残したままのものもいます。 出生時は元の毛色に目元にほんのわずかに白毛が混じる程度なので、生まれてすぐ芦毛と判断するのは難しい場合もあるようです。黒っぽい肌を持ち、唇など毛の薄いところでその色合いを見ることができます。
体毛の色合いが変化していくメカニズムは遺伝子変異にあります。芦毛の馬の持つ特有の遺伝子の働きによって、メラニン色素を生成するメラノサイトの成長・分裂が著しく促進されます。大量に生成されたメラノサイトは肌の色を黒くしますが、ある段階でその個体の持つメラノサイトを使い切ってしまいます。そのため毛根で作られる色素の量が次第に減っていき、毛色が白へと変化していくのです。
(代表的な競走馬)
・クロフネ ダートにおいて日本競馬史上の最強馬と評される一頭。筋肉質で大きな身体つきながらも、おっとりと落ちついた性格の持ち主だったとか。 現役時代はグレーの馬体でしたが、晩年はすっかり白馬へと毛色が変化していました。

・白毛(しろげ)
全身の真っ白な毛と桃色の肌を持つ白毛馬。身体の一部にほかの毛色の斑が入る場合もありますが、芦毛馬と違い生まれた時から真っ白なことが多いのが特徴です。
眼の色は黒〜茶、まれに薄青色のものまで様々です。
白毛は原則白毛遺伝子を持つ親馬から生まれますが、青毛や鹿毛など全く違う色合いの親馬から突然変異で生まれることがごくまれにあるんです。 その確率はなんと1~2万頭に1頭ほどだとか! 例として、青鹿毛の父・サンデーサイレンスと鹿毛の母・ウェイブウィンドから生まれた純白の白馬、シラユキヒメがいます。
シラユキヒメは美しい白毛と優れた血統を持つことから繁殖牝馬として活躍し、日本における白毛馬一族の繁栄に貢献しました。
(代表的な競走馬)
・ソダシ 先程ご紹介したシラユキヒメを祖母に持つソダシは、白毛馬として史上初のG1制覇を達成。 ターフを駆け抜ける白く輝く馬体は多くの人を魅了しました。

少し変わった毛色

・月毛(つきげ)
英語圏ではパロミノと呼ばれます。 陽に当たると美しい金色にも見える黄白色の被毛を持ち、長毛は被毛より明るい色をしています。 月毛はサラブレッド種にはほとんど見られず、国内では北海道和種(道産子)によく見られる毛色です。 上杉謙信の愛馬として知られる「放生月毛」は、名前の通り月毛の馬であったと記録が残っています。

・佐目毛(さめげ)
象牙色〜白の明るい被毛を持ち、長毛はややクリーム色を帯びています。
白毛馬との判別が難しい部分もありますが、佐目毛馬の瞳は抜けるような薄い青色をしているのが特徴です。 日本では神社に奉納される「神馬」として重宝されており、大阪府・住吉大社の神馬「白雪号」は佐目毛の北海道和種馬なんですよ。

・駁毛(ぶちげ)
身体の一部に大きな白斑(ぶち)があるのが駁毛です。サラブレッド種には珍しいですが、馬全体としては決して少ない毛色ではなく、さまざまな品種に現れます。
白斑の範囲が原毛色(ベースの毛色)より小さい場合は栗駁毛、鹿駁毛、白斑の範囲が原毛色より大きい場合は反転して駁栗毛、駁鹿毛というふうに記載します。

まとめ

現在ではこのように馬の毛色は多種多様なものが保存されており、このほかにもたくさんの色や模様の馬たちも存在します。 同じ「栗毛」とされている馬でも色合いの濃淡がさまざまだったり、成長するにつれて色味が変化したりと面白いですよね。 あなたの好きな馬は何色でしたか?

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