馬とコミュニケーションを取ろうと思うとき、最初のうちは馬の考えていることがわからずに指示がうまく伝わらなかったり、はたまた怒らせてしまったりと困惑してしまうことが多々あるのではないでしょうか。
しかし諦めずによ〜く観察していると、実は馬は私たちに、彼らなりの言葉でたくさんのメッセージやサインを送ってきてくれているんです。そのことに気づけたら、今よりもっとスムーズに馬と「対話」できるかも!
この記事では、馬の身体の動きや仕草から読み取ることができる「馬の言葉」の一部をご紹介していきます。
耳
馬の耳は思っている以上にとても柔らかく、また10種類(!)の筋肉に支えられていることから、あらゆる方向に動かして周りの状況を把握することができます。
また、馬に関しては「耳は口ほどにものをいう」と言えるくらいに、私たちは耳の動きから彼らの気持ちの動きを読み取ることができます。
左右に少し開いて前を向いている
馬が落ちついて、フラットな気持ちでいるときの状態です。
周りに聞こえる物音を自然に拾って、前後左右に耳を小さく動かしています。
左右にふんわり倒れている
さらにくつろいで、のんびりとしています。気持ちの良い手入れをしてもらったり、痒いところをちょうど掻いてもらえたりと気持ちのいい時にこういった耳をすることが多いようです。ただ、この耳つきは体調が悪く脱力している時にもみられる事がありますので、耳以外の身体の状態にも気にかける必要があります。
ピンと立てている
耳を立てた先に何か気になるものがいる/あるようです。馬は見慣れないものや聞き慣れない音に緊張しますので、穏やかに声をかけてあげるといいでしょう。
両耳を小刻みにクルクル動かしている
馬が考え事をしていたり、どうすればいいのか分からずに不安を感じています。
気持ちが落ち着かないために、周りの状況を少しでも拾い集めようとしているんですね。
後ろに倒している
驚いたり、不愉快な気持ちを感じています。
自分が馬に働きかけた時に馬がパタリと耳を倒したら、あなたの指示や動作に何か不満があるのかもしれません。何が馬の気に入らないのかよく観察してみましょう。
頭に着くほど後ろに引き絞っている
この耳をした馬は興奮し、強い怒りや不快感を全面に表しています。場合によっては威嚇のために噛みつかれたり後ろ足で蹴り上げられる可能性も十分に考えられますので、くれぐれも馬の後ろに立たないように注意しましょう!
目
馬と親しんでいくらかの時間を過ごすと、彼らは実に表情豊かな生き物であることを実感するのではないでしょうか。ここでは馬の目に焦点を当ててみていきましょう。
白目を見せる
普段馬の白目が見えることはほぼありません。 馬が少し顔を傾けて白目を見せてくる場合、少し緊張していたり、不安な気持ちになっていることが多いようです。
【三白眼の馬?】
馬の中には、生まれつき白目がよく目立つ馬がいます。競走馬の中にも時々見られますね。これは「輪眼(りんがん)」といいます。通常、眼の表面は角膜(黒目)と強膜(白目)で構成されていて、ほとんどの馬の強膜には色素があり白目に見えないのですが、輪眼の馬はその部分の色素が欠落して白っぽくなり、三白眼のような目つきに見えるのです。
人によっては睨まれているように感じたりするかもしれませんが、決して怒っているわけではありません。 馬によって輪眼の度合いも違って、それぞれ表情豊かに感じますね。
つぶらな瞳!
おやつやマッサージなどをおねだりしたい時、人間に対してなにかリクエストがある時に、馬は表情を柔らかくして、目をうるっと可愛くするんです。その可愛い顔にほだされておやつをついついサービスしてしまう人も多いのではないでしょうか? つぶらな瞳は相手に対して、自分に反抗の意思がないことをアピールする意味合いでも使われることがあるようです。
目元を険しくする
不安な時、指示に従いたくない、緊張している時に目元に力を入れて、眉を寄せるような仕草をします。人間の慣用句のように「目を三角に」して、怒りを表現することもあります。
口元
ゆったりと緩んでいる
馬が落ちついている時は、口元に力みがなく、うすく微笑んでいるようにも見えます。さらに眠くなったり、よりくつろいでいると口元がどんどん緩み、口をぽかんと開けてしまう馬も。
もぐもぐしている
馬が口の中でもぐもぐ噛むような仕草を「チューイング」といいます。
物音や人の動きに反応して、その出来事に自分で納得しリラックスした時に行います。
人から合図を受けたときに馬が口元をもぐもぐさせたら、「あなたの指示に従うよ!」と馬がメッセージを送ってきてくれたと考えて良いでしょう。
また、似た動きを幼い仔馬がすることがあります。これは「スナッピング」と言って、仔馬が群れの大人の馬に対して、「自分は無害であり、服従しています」という意思を表すために口をパクパクして見せる行動です。
ギュッと噛み締めている
じっとしている馬が口元に力を込めているときは、なにか嫌な気持ちになっていたり、反抗の意思をアピールしているのかもしれません。 もし馬のその様子が見られたら、少しでもその原因を取り除けるように注意してみましょう。
もしくは、運動中に馬が騎手の指示に集中している時にも同じ表情を見ることができます。
人間も集中している時は口をギュッと引き締めますよね。それと同じです。
動作
前掻き
食べ物や水、身体を掻いて欲しいなど、人間になにかして欲しいのにしてもらえない・・といった時に、注意を引こうとして前脚で地面を掻く行動です。
足元の見慣れないものを確認したり、感じている不快さを解消しようとして前掻きをすることもあるようです。
一点気をつけたいのは、「疝痛」の苦しさを感じている時にも馬はこの行動をするということ。馬の命にもかかわる不調なので、なにかおかしいと感じた時は注意深く観察しましょう。
あくびをする
眠くなったときにするあくびの他に、不安や緊張を振り払うといった意味合いであくびをすることがあります。これは犬などにも見られる行動で、感じたストレスや退屈を払い、気持ちを落ち着かせる効果があるそうですよ。
まとめ
この記事では馬の身体の動きなどから読み取ることのできる「言葉」をご紹介してきました。
実際は、馬はいくつかの動作を組み合わせて、段階的に相手とのコミュニケーションを図ります。ひとつの動きだけに集中するのではなく、馬の身体全体に注意を払う必要がありますね。
例
- 1、耳をピンと立て、身体をすこし緊張させる(なんだろう?)
- 2、耳をクルクルさせる(考え中・・)
- 3、口をもぐもぐさせ、身体の力を抜く(状況を理解できた!)
馬と人とはそもそも思考の組み立て方が異なる生き物同士です。
ここに書いた馬の仕草が必ずしもあなたの目の前にいる馬に当てはまるわけではありません。馬の言葉はとてもささやかで、あなたが注意深く聞き取らなければそのメッセージはこぼれ落ちてしまいます。 馬の性質をよく学ぶことはとても大切です。それと同じくらい大事にしてほしいことは、あなたの心と身体そのもので馬をよく観察し、対話してみること。トライアンドエラーを繰り返して、「馬の言葉」を学んでいきましょう。